2005年7月25日

当社は神戸市と共同で、下水処理の過程で発生するメタンガスを都市ガス(天然ガス)相当まで精製
できる装置を実用化しました。下水を生物で浄化する過程で発生するガスなので、「バイオ天然ガス」と
命名し、昨年度より、天然ガス車燃料として、市バス、ごみ収集車などの市の公用車で試験走行を行っ
ています。

 このたび7月26日(火)〜29日(金)に、東京ビックサイトで開催される『下水道展'05東京』においても当社
は、この「バイオ天然ガス」の精製装置やプロセスを紹介すると同時に、神戸市が同展示会で開催する
「バイオ天然ガス」を使用したバスの試乗会にも協力しています。

 下水を処理する際に発生する汚泥を消化(発酵)処理による減量化を行う過程で消化ガスが発生します。
消化ガスは、メタン濃度が約60%(残り約40%は二酸化炭素)と低いため、都市ガスと比べ発熱量が低く、
しかも微量に含まれるシロキサン・硫化水素等の不純物による機器の損傷、劣化の問題があることから、
有効利用の用途が限られていました。 当社は、海外メーカーよりライセンス供与を受けたメタンガス精製
技術(高圧水吸収法*)をもとに、2004年11月より神戸市との共同研究で、同市東灘区の「東水環境セン
ター」で実証実験を行い、メタン純度を98%以上に濃縮する事に成功するとともに、国内で初めて高圧水吸
収法によるシロキサンの除去性能を実証し、都市ガスとほぼ同等の高品質なガスを安定精製することに
成功しました。

 下水汚泥から精製したメタンガスを、既存の天然ガス自動車の燃料として活用する取り組みは全国でも
初めてのことで、既に、自動車試験機関において排ガス成分や走行性能などの測定・試験を行い、最新の
排ガス規制値を大幅に下回り、かつ、都市ガス燃料と同等の走行性能が得られることを確認しています。

 また、「バイオ天然ガス」を燃料とした場合、エンジンから排出される炭酸ガスは、都市ガスや石油などの
化石燃料とは違い、温室効果ガスとしてはカウントされないカーボンニュートラル*なクリーンエネルギーです。

 東水環境センターに設置している実験装置だけで年1万km走行する普通車約400台分(燃費を約10km/Nm3
で計算)の燃料ガスが精製でき、実用設備が完成すると1000台分以上を精製することができます。  
化石燃料の消費削減と同時に、CO2排出削減・地球温暖化対策にも結びつく有効なエネルギー利用手段と
して、幅広く利用されることを期待しています。

                                                                   

<語意説明>
・高圧水吸収法
  メタンの水への溶解度は二酸化炭素や硫化水素にくらべて非常に小さく、また、圧力を上げるほど溶解
度差が拡大する原理を利用して、二酸化炭素と硫化水素を水に吸収させて分離するもので、吸収水には
下水処理場で豊富に利用可能な処理水を利用します。

・カーボンニュートラル
  石油や石炭、天然ガスは、長い年月をかけて、地球に固定されたもので、このような石化資源を燃焼し、
二酸化炭素を大気中に放出した場合には、地球の奥に保存されていた炭素を急激に放出することとなり、
大気中の二酸化炭素が大きく増加する原因となります。これに対し、バイオガスの原料は、家畜の糞尿な
どの有機物であり、これを突き詰めて考えると植物の光合成によって生産された有機物です。植物の光合
成は、光エネルギーと大気中の二酸化炭素から有機物を合成する反応であり、この光合成由来の有機物
が最終的にバイオガスとして利用されて、二酸化炭素を放出しても、大気中の収支はプラスマイナスゼロと
なります。このような炭素循環の考え方がカーボンニュートラルです。


<「バイオ天然ガス」精製技術の概念図>


○お問い合わせ先

株式会社神鋼環境ソリューション

第一営業本部 水処理第一営業部(東京)  TEL(03)5739−5810
水処理第二営業部(大阪)  TEL(06)6206−6745


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