人の暮らしと環境にとって、微生物の力は欠かすことができません。当社では、環境浄化に関わる微生物の診断や、水に含まれる有害物質を生物の力によってまとめて評価する手法を実用化しています。
私たちの生活が便利になっていくにつれて、化学物質が日々増え続け、環境に予期しない影響を与える可能性があります。そこで、複数の化学物質を総体的に評価し、未規制物質の影響も把握できる生物試験に取組んでいます。また、遺伝子解析技術により環境浄化に関わる微生物を解析し、微生物の力を上手に引き出す方法を探索しています。さらに試験だけにとどまらず、排水の改善にも取組み、”人と地球の環境をささえる技術”として日々開発に励んでいます。
藻類、甲殻類、魚類等の生物により排水中の毒性影響と化学物質の複合影響を評価し、排水そのものの安全性を明らかにすることができる技術です。海外では広く法制化されており、国内でも環境省が生物試験を活用するよう推奨しています。当社では水処理メーカのノウハウを生かし、排水の改善にも役立てています。この技術により、従来の化学分析だけでは分からなかったことが、これら水生生物によって明らかになってきています。
ゼブラフィッシュを対象とし、受精卵から稚魚へ成長する過程で排水に連続的にばく露した際の影響を評価します。
ミジンコは水系の食物連鎖において、一次消費者に位置付けられます。これを排水にばく露し、生長や増殖への影響を評価します。
ムレミカヅキモは藻類の一種で、水系の食物連鎖における生産者に位置付けられます。これを排水にばく露し、生長や増殖の影響を評価します。
化学分析に携わりながら、もっと排水を多面的に評価できないかと思っていたところ、環境省のセミナーで生物試験のことを知りました。もともと生物に興味を持っていましたので、この試験技術を当社のメニューにしたいと考えました。生物を扱うことから、その試験の信頼性が求められ、2017年に藻類に関して国際的な基準であるGLP(Good Labolatory Practice)認定を取得。国内10社目で、水処理会社では初となりました。海外ではすでに活用が盛んですが、国内では事例が少なく、日々関連論文を読みながら開発に取組んでいます。
遺伝子解析技術により環境浄化に関わる微生物を解析し、微生物の力を上手に引き出す方法を探索しています。下水・排水処理で使われる活性汚泥を中心に、処理の安定化や最適化に貢献しています。
高精度・高感度なリアルタイムPCR法により、試料中に目的の微生物の遺伝子がどれくらい存在しているのか解析します。
排水処理の性能を左右する微生物を定期的に定量解析することで、処理設備の維持管理に役立てることができます。
最新の遺伝子配列解析技術により、試料中に存在する微生物の構成・割合を網羅的に解析します。
さらに、統計解析によって、排水処理場、季節、処理条件の違い等の要因による微生物群集の差異を推定することや、処理性能を左右する微生物を特定することが可能です。
ヒトの親子鑑定や農作物の品種識別にも使用されるRFLP法によって、試料中に存在する微生物群集全体の「パターン」を解析します。経時的に試料を採取してRFLP解析することで、微生物群集の変化の有無を迅速に推定することができます。
「微生物の量・種類の変化」と「排水処理性能の良否」の関連は排水の組成によって異なるため、実際は処理場ごとにデータを細かく解析して関連性を見つけることになります。維持管理の指標となる微生物を見つけるため、処理場の維持管理をされている方々から様々な情報をいただきながら、データと向き合っています。
健やかなる環境と暮らしを守るために、確かな技術で新たな研究開発を支え、環境と未来の社会に貢献します。