当社の金属ナトリウム分散体(SD)は金属ナトリウムを微粒子化させて鉱物油中に分散させたもので、安全性、操作性、反応性を高めています。
当社では長年の実績を有し、新しい技術を開発しています。
大学などで有機化学を学ばれた方の中には、金属ナトリウムを実際にご使用された方もいらっしゃるかと思います。用途としては、溶媒脱水、バーチ還元、アルコキシド合成などで、還元剤として用いられます。
金属ナトリウムは油に濡れたインゴットあるいはワイヤー等です。
使用方法は、
①ナトリウムを取出す → ②表面をカッター等でカット → ③ヘキサン等で洗浄 → ④秤量 → ⑤投入
という流れになります。
ナトリウム表面の油を完全に取ってしまうことはできないので、秤量は濡れたままになり、正確な投入量は分かりません。
そのためナトリウムを過剰に入れる必要があるため、反応後に失活が必要になります。
ナトリウムを失活する際には不活性ガスを充填させた容器内で、冷却したアルコールに少量ずつ投入しながら失活していく方法等がありますが、暴走反応のリスクがあるため、監視が必要でした。危険作業な上に人件費も高くつきます。
そのため、近年ではナトリウムを使う方は減ってきています。
有機化学分野で還元剤として用いられる金属には、マグネシウムやリチウムがあります。
マグネシウム | グリニャール試薬の調製に利用され、削り節のような形で使われます。 非常に有用ですが、暴走反応のリスクがあります。 そのため、工業規模での実施には技術力の蓄積とノウハウが必要で、実用化できている企業は国内でも多くはありません。 |
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リチウム | 合成ゴムの製造に用いるブチルリチウムや医薬品製造に用いられるLDAをはじめとして、様々な有機リチウム化合物が用いられています。 しかし、近年のリチウムイオンバッテリーブームでリチウムの使用量が急激に増加し、それに伴ってリチウム価格も高騰しています。 |
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グリニャール試薬や有機リチウム化合物のように液体としての取扱いが可能で、安全性と反応性に優れた還還元剤が求められていました。
当社の金属ナトリウム分散体は金属ナトリウムを10μm程度の微粒子にして油中に分散させたものです。一般にSodium Dispersion (SD)と呼ばれます。
当社では、PCBの脱塩素化用薬剤として、製造してきました。
金属ナトリウム | SD | ||
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外観 | インゴット、ブロック等 | 灰色の液体 | |
安全性 | 危険物分類 | 第3類 | 第4類第3石油類非水溶性液体 |
指定数量 | 10kg | 2,000L(約1,800kg) | |
指定数量あたりのナトリウム保有可能量 | 10kg | 約450㎏ (ナトリウム含有量約25wt%) |
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毒劇物取締法 | 劇物 | 非該当 | |
使用法 | ラボスケールの場合 | 表面の酸化被膜をカッター等でそぎ落とし、表面をヘキサン等で洗浄してから投入 |
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工業規模の場合 | インゴットをカットし、人の手で投入します。比表面積が小さいので、反応性を高めるために過剰に投入する必要があります。そのため、危険な失活作業が必要です。 | 配管供給が可能でナトリウムに触れる必要がありません。比表面積が大きいので、理論量に近い投入量で反応が進むため、失活作業も容易になります。 | |
使用温度 | 融点(98℃)以上で用いることが多い |
SDは金属ナトリウムの微粒子が油にコーティングされています。
そのため、以下のようなメリットがあります。
法規面でも以下のようにメリットがあります。
金属ナトリウムは消防法における危険物3類に該当し、指定数量は10㎏です。
一方、SDは危険物第4類第3石類非水溶性液体に該当し、指定数量は2,000Lです。SDは比重が約0.9、金属ナトリウム濃度が25wt%ですので、指定数量あたり約450㎏の金属ナトリウムを保有できます。
金属ナトリウムは毒劇物取締法において、劇物に指定されています。一方、ナトリウムを製剤化したSDは同法律において劇物に該当しません。
このようにSDは、ナトリウムの高い反応性をさらに高めつつ、
安全性、操作性を高めています。