2020年3月16日
株式会社神鋼環境ソリューション


−高品質・安定的なビール製造のための酵母ハンドリングの技術開発−
「ビール醸造工程における酵母スラリー撹拌システムの開発」が
令和元年度 化学工学会技術賞を受賞


  株式会社神鋼環境ソリューション(本社 兵庫、社長 粕谷強)とアサヒグループホールディングス株式会社(本社 東京、社長 小路明善)の独立研究子会社であるアサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社(社長 佐見学)にて共同開発した「ビール醸造工程における酵母スラリー撹拌システムの開発」が、「令和元年度化学工学会技術賞」を受賞しました。

  化学工学会は、化学工学の学術的水準の進展を支え、人材を育成し、それらの成果を社会に有機的に還元するための、中心的学会として活動することを目的に設立された学術団体です。技術賞は、化学工学に関する技術、または化学関連産業の技術、またはシステム開発に関して特に顕著な功績のあった研究に対して贈られる賞です。

  神鋼環境ソリューションは、化学・食品工業分野において、製造プロセスの心臓部となるグラスライニング製機器や各装置により、今後も高品質なモノづくりに貢献してまいります。


【技術開発概要】

ビール醸造で最も重要な発酵工程を担う酵母は、温度や酸素量といった周囲の環境変化や、物理的なストレスに敏感に反応します。ビールの香りや味わいを構成する成分の多くは酵母がつくりだしているため、酵母にストレスがかかり発酵に影響が生じると、目指すビールの香味をつくりだすことが困難になります。そのため、高品質なビールを安定的に製造するには、常に酵母を適切にハンドリングし、安定した発酵工程を実現するための技術が欠かせません。


今回、一度発酵を終えて回収した酵母の懸濁液(以下、酵母スラリー※1)を再度利用するまで保管する工程において、酵母の活性を維持しながら濃度を均一に保つことで安定した発酵を促す技術として、当社高効率撹拌翼「フルゾーン」※2をベースに、酵母スラリーの撹拌に適したシステムを開発しました。


開発の主なポイント

@撹拌による物理的な力や温度などの環境条件が、酵母の活性にどのように影響するかを詳細に解析し、「低温かつ

短時間であれば、撹拌の際に酵母が受けるダメージを最小化できる」可能性を見出した。


A酵母スラリーはビールと多くの酵母が含まれており、粘性の高い状態で撹拌が難しく、強い撹拌を行うと酵母に

ダメージを与える。この困難な撹拌を達成するために、当社高効率撹拌翼である「フルゾーン」をベースに、酵母

スラリーを低せん断で均一に混合できる撹拌システムを開発し上記可能性を検証した。


Bさらに実際の酵母スラリータンクに適用するために、タンク内の撹拌状態をCFD(コンピュータによる流動解析)を

用いて最適化し、酵母へのダメージを最小限に抑えられる撹拌システムを開発した。


この開発技術をスケールアップし、実際のビール工場に展開した結果、酵母がより活性の高い状態で維持され、高品質なビールの安定製造に寄与しています。


本技術はアサヒビール株式会社のビール工場をはじめ多くのビール工場に導入され、現在国内ビール製造現場で稼働しています。


今回、化学工学と農芸化学の分野を横断的に融合させることで、これまでビール製造の現場で永らく抱えていた課題を解決に導き、社会実装の成果をあげたため、受賞に至ったものと考えております。

※1 酵母スラリーとは
スラリーとは、液体中に固体の粒子が混在しており、多くは粘性の強い状態のものを指します。酵母スラリーには、ビールと多くの酵母が含まれており、粘性の高い状態になっています 。

※2 高効率撹拌翼「フルゾーン」
フルゾーンは、神鋼環境ソリューションが開発した極めて広い粘度範囲での効率よい混合と晶析など多様な用途への適用を可能とした高効率・多機能型の撹拌機です。2枚のワイドパドル翼を上下にクロス配置した立体的な形状がすぐれた撹拌性能を発揮します。

      【参考写真 ※写真は標準的なフルゾーン翼で、用途により形状は若干異なります】


以上

発表資料はこちら
PDFファイル[203KB]


○お問い合わせ先

株式会社神鋼環境ソリューション 総務部 TEL(078)232-8018

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