ともに挑む先輩たち# 06

M.H

# プロセス機器

# 機器設計

# 開発

# 機械

プロセス機器/設計・解析

お客様の求める性能を
的確に満たす製品を
ひとつひとつオーダーメイドで
設計する。

半導体の製造に必要な薬品や、医薬・化粧品、食品などの原料の製造プロセスに使われているのが「プロセス機器」です。原料を混ぜ合わせる、乾燥させるなどのプロセスを経て、生活に身近な製品のベースとなる素材を作る。プロセス機器は、実は様々な産業を縁の下で支えている欠かせない存在です。

プロセス機器には多くの種類があり、貯蔵や熱交換、蒸留など、役割は多岐にわたります。私が扱っているのは、内部で化学反応を起こして化学物質を生産する「反応機」と呼ばれる装置です。当社の反応機には、コアテクノロジーである「グラスライニング」を使ったものと、耐食性に優れた特殊金属を使ったものがありますが、私が担当しているのは後者です。水分や油分、溶剤、強酸・強アルカリといった様々な物質を投入する上に、撹拌(*1)や加熱・冷却、加圧など過酷な環境にさらされるため、反応機には高い耐腐食性や耐摩耗性が求められます。そういったお客様の求める性能を的確に満たす製品をひとつひとつオーダーメイドで設計するため、広範な知識が必要になります。

*1:複数の物質を混ぜ合わせる操作。溶解、化学反応の促進、温度・濃度の均一化、不溶物同士の混合乳化(エマルジョン化)、沈殿物の凝固防止など多様な目的で用いる。神鋼環境ソリューションは、長年にわたるプロセス機器製造の中で高度な撹拌技術を培ってきた。

不意に訪れた異動の提案。
ふたつの部署を行き来したからこそ
見えたこと。

入社1年目の冬、新しく設計した反応機の性能試験に主担当として携わることになりました。その過程でスケールダウンモデル(実際の製品よりも小さな縮尺のテスト装置)を使って、求められる性能が発揮できるかどうかのテストに挑戦することに。当時は装置そのものの扱いすらわからない状態、撹拌翼の回転数調整や、ガス流量変更など、操作ひとつにも戸惑うことばかりでした。学生時代の研究は撹拌特性を対象にしていましたので、基本的な専門知識は身につけていたものの、実践の場になると思うように使いこなせず苦労しました。素直にわからないことを整理した上で相談すれば、上司や先輩たちの知恵も借りることができましたし、幾多の壁を乗り越えてやりきることができました。無事に先方のニーズを満たすことができ、「ぜひお願いします」と受注のお返事を頂けた瞬間は忘れられません。

設計として1年の経験を積んだ頃に、部門長から研究所への異動を提案されました。設計者としてキャリアをスタートしたばかりでの配置転換に、最初は驚きました。しかし、「基盤技術を学ぶことは、後々設計の仕事に活きる。若いうちに他部署の見聞を広めておくことも今後の糧になるはずだ」という上司のアドバイスもあり、「これも可能性を広げるチャンスだ!」とポジティブに捉え直すことができました。研究所での1年間の勤務を経て、3年目の今ふたたび設計の現場へ戻ってきました。実際に研究所での学びや経験のおかげで、違う視点からも思考を深める習慣が生まれ、いまの業務に活かせる知見を得ることができたと実感しています。

安心感のある環境と、
未知への挑戦機会。
両方あるからこそ、
若手が成長し続けられる。

反応機は量産品ではなく、お客様との打ち合わせを頻繁に行いながら、ニーズに合わせてオーダーメイドで作り上げていきます。だからこそ、ただ毎回仕様通りに作るのではなく、我々の技術と知識を最大限使って、お客様のご要望を叶える最適な形を提案するよう心がけています。そんな試行錯誤の末に、お客様の満足の声を引き出せたときには、とてもやりがいを感じますね。同時に、自分が設計したものが実物となって目の前に現れる瞬間には、「モノづくりって面白いな」と何度見ても興奮と達成感を覚えます。

また、ひとつのことを極めるスペシャリストになることももちろん必要ですが、撹拌だけでなくプロセス機器の全体像を理解することが今の私のキャリアには重要な成長だと考えています。現在は、FEM(有限要素法*2)を用いて、構造にかかる応力や疲労強度の解析・評価も行えるようになりましたが、まだまだ未知の世界への挑戦が多いです。そんな中で私の背中を押してくれるのが、上司とのフラットな関係性です。年齢や役職に関わらず、いつも誰かが優しく親身になって話しかけてくれる職場なので、悩みや不安があってもすぐに相談ができます。この安心感あふれる環境が土台にあるからこそ、未知の分野や初めて任される役割にも勇気をもって挑戦することができるのだと思います。若手時代に自己成長ができるか、は大事な視点だと思います。その上で、若手の挑戦を周囲が応援してくれるカルチャーがあるかも企業選びの上では、大事にしてほしいですね。

*2:Finite Element Methodの略称。コンピュータによって物理シミュレーションを行うための手法の一種。物体を小さな「要素」に分割してそれぞれの要素ごとに特性を計算し、それらを足し合わせて全体の挙動を解析する。

あずけた人の想い

彼ならあずけられる
と確信した。

設計とは、当社理念である、今を超える発想で健やかな環境と暮らしを次世代へ提供するという、夢のある、非常に責任ある仕事です。そのため設計者は「言われたことをやる」だけの力ではなく、「自らが考え(踏み込む)」、「あらゆる情報を総合的に捉えて顧客満足を得る提案ができ(挑む)」、「それを形にしていく(やり抜く)」力が必要になります。彼には普段の会話からもその素養が備わっていると感じていたため、研究所へ異動の話が上がった時、彼ならその前向きな性格と吸収力の高さで必ずこの経験を設計に活かすことができると確信し、推薦しました。こちらの期待通り、現在彼はその時の経験と自身の能力を存分に活かし、当室で活躍中です。今後も自らの研鑽を怠らず、事業部を支える柱になることを期待しています。

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